インフルエンザの異常行動について/子どもが感染したら注意して

子どもの病気


子どもがインフルエンザにかかったときに注意したいのが異常行動です。この記事ではインフルエンザの異常行動について、どんな行動がみられるのかや、いざ起きたときの適切な対応法、事前にできる安全対策などをご紹介します。

インフルエンザの異常行動とは?子どもに起こりやすい?

インフルエンザの異常行動とは、インフルエンザにかかった人が普段はしないような行動や発言をすることです。

厚生労働省によると、インフルエンザの異常行動は小学生〜18歳頃までの男性に多いとされています。男性よりは少ないですが、女性に現れることもあります。乳幼児に起こるケースは多くありません。

そうはいっても、インフルエンザに感染したからといってこの年代の子どもに必ずしも異常行動がみられるわけではありません。むしろ異常行動がない子どもの方が多いです。

インフルエンザの異常行動の例

インフルエンザによる異常行動の主な例は、次のとおりです。

  • 突然、外に出ようとする
  • ベランダなどに出て飛び降りようとする
  • 意味不明なことを言う
  • 急に走り出す
  • 泣きながら歩き回る など


ほかにも、突然笑い出す、話しかけても反応がないといった行動がみられるケースもあります。

インフルエンザの異常行動の原因は?タミフルは関係ある?

インフルエンザの異常行動の原因は、はっきりとわかっていません。インフルエンザへの免疫反応で脳が一時的に不安定になる、高熱によって精神的に混乱状態になるといった説があるようですが、どれも医学的に解明されていないのが現状です。

かつてタミフルなどの抗インフルエンザ薬を服用後に異常行動が起きたという報告がいくつかありました。しかし調査結果により、以下の理由からタミフルなどの服用は異常行動に直接関係していないことがわかっています。

  • インフルエンザにかかった際には、抗インフルエンザウイルス薬を服用していなくても異常行動が現れることがある
  • 服用した抗インフルエンザウイルス薬の種類に関係なく異常行動が起こることがある


つまり子どもがインフルエンザに感染したら、抗インフルエンザ薬の服用の有無に関係なく異常行動に注意しなくてはいけません

なお、インフルエンザが重症化して起こる「インフルエンザ脳症」の初期症状として異常行動があらわれることがあります。ただしインフルエンザ脳症は乳幼児に起こりやすいことや、異常行動以外の症状もあらわれることから、小学生以上の子どもが異常行動を起こした場合にインフルエンザ脳症が原因であることはほぼないと考えられます。

インフルエンザの異常行動は後遺症などが残る?

インフルエンザの異常行動そのものによって脳などへ後遺症が残ることは、基本的にありません。ただし異常行動の結果、頭を強く打つなどの事故が起きて後遺症が残るリスクはあるため注意が必要です。

インフルエンザ脳症の初期症状として異常行動がみられた場合、そのあとに意識障害やけいれんが長時間続くと、ごく稀に知能障害や運動障害などの後遺症が残ることがあります。

インフルエンザで異常行動がみられたらどうする?治療は必要?

インフルエンザにかかって子どもに異常行動がみられたら、絶対に目を離さないようにしましょう。

ベランダや家の外に出ようとして危険が及びそうなときは、驚かせないようにしながら行動を止めさせてください。それ以外の場合は、大声で呼びかけたり、子どもの行動を無理に止めたりすることはせず、やさしくゆっくり対応するようにしましょう。子どもがびっくりすると、さらに行動が激しくなるおそれがあるからです。

異常行動が短時間でおさまって普段通りの状態に戻れば、基本的にそのまま様子をみて問題ありません。

異常行動が長時間ずっと続く、一度おさまっても再びみられるといった場合や、異常行動のが悪化して意識障害やけいれんが起きた場合は、すぐに受診するか救急車を呼ぶようにしてください。症状に応じて適切な治療が必要となります。

異常行動での事故を防ぐために家庭でできる対策3選

インフルエンザの異常行動のなかには、危険な事故につながりかねないものもあります。異常行動が起こる前に、事故を防ぐための安全対策をしておきましょう。

発熱後2日間は子どもを一人にしない

インフルエンザでの異常行動は発熱から2日以内に発現することが多いとされています。事故を防ぐためにも、少なくとも発熱後2日間は子どもから目を離さないようにしてください。

屋外に出られないように施錠する

異常行動で特に危険なのが、ベランダからの転落や家の外に出て車などと衝突することです。玄関ドアやベランダへつながる掃き出し窓などの鍵は必ず施錠しておきましょう。鍵をかけていても子ども一人であけてしまうこともあるので、可能であれば手の届かない位置に補助錠を付けると安心です。

寝る部屋を変える

異常行動は睡眠から覚めてすぐに起こることが多いとされているため、子どもがインフルエンザにかかっている間は、できるだけベランダに面していない部屋や窓に格子がある部屋で寝かせるようにしましょう。
戸建ての家で子どもの寝室が2階以上の場合は、できれば1階で寝かせるとベランダや階段からの転落リスクを防ぐことができます

インフルエンザのホームケアはオンラインで相談

インフルエンザの異常行動は事故につながるおそれもあるので、今回ご紹介した方法を参考に事前に対策をしたり、いざ起きたときに落ち着いて対応したりできるといいですね。

また子どもがインフルエンザにかかると、異常行動に対する心配だけでなくホームケアの悩みを抱えることもあるかもしれません。そんなときは、子どもの医療に特化したアプリ「キッズドクター」が便利です。チャットで看護師に相談したり、自宅にいながらビデオ通話で医師のオンライン診療を受けたりすることができますよ。インフルエンザのホームケアについても相談できるので、困ったときは検討してみてくださいね。

監修者について

監修者 | 医師 黒川 剛史
日本外科学会認定外科専門医、日本救急医学会認定救急科専門医。2001年神戸大学医学部卒業。西神戸医療センターにて初期研修を修了。兵庫県災害医療センターにて3次救急に従事後2018年よりシンガポールでの日系クリニック勤務。シンガポール国立大学総合診療卒後教育コースにて総合診療研修を行い、現在子供から大人まで初期診療に従事中。

この記事について

執筆/編集
キッズドクターマガジン編集部

参考文献

ホームケア